「ワイヤードのコミュニケーションによって,人は一固体であることを必要としなくなる。私の声は,一瞬で,または,いつの日か,世界の端まで届くようになる」。
先ごろ他界したドイツ人ハッカー,バウ・ホラント氏の業績が偲ばれている。ホラント氏は「カオス・コンピューター・クラブ」の設立メンバー。20年前に,人々がコンピューター・ネットワークに自由にアクセスできるようにしたいと記した。ホラント氏は,コンピューターによって一般大衆に力を与えることができるとし,ハッキングには信念が必要だとした。通信事業を独占していた組織に,意図的なハッキングを仕掛けたりもした。
ホラントはハンブルグ銀行から13万マルクをハッキングで引き出したりもした。その金もすぐに返却した。別に勧進懲悪の話だけでないが,でもどこかで納得できる行為ばかり。そんな行動に惹かれた人は多いのだろう。
ホラントも他のハッカーと同じく,まずは電話からだった。60年代のドイツのハッカーは,電話ボックスにフォークを持って入り,硬貨を入れて,フォークで数カ所のボタンを同時に押すことで,何時間でもどこへでもかけられた。いわゆるフォーク・ハック。だがその後にコンピューター・ネットワークが動き出した。誰もが端末として,メッセージを送り,メッセージを受け取る。フォークは必要ない。肉体と云うのは,ネットワーク端末になるためのインターフェイスに過ぎず,人は端末として稼働すれば,それでいい。ホラントが想い出の中でフォークについて語り,私たちはフォークなしでメッセージをやり取りする。そうして,進化していくんだ。バウ・ホラントに,追悼。
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